転職したい、という気持ちはある。
今の職場を離れたい。
別の場所に行きたい。
このままではいけない気がする。
そこまでは、自分の中ではっきりしている。
でも、いざ転職サイトを開くと、手が止まる。
「活かせるスキルを入力してください」
その言葉を見た瞬間、何も書けなくなる。
自分に、何があるんだろう。
「特技は何ですか」に答えられない
転職を考えると、必ず出てくる問いがある。
あなたの強みは何ですか。
これまでの経験で、活かせるものは何ですか。
自己PRをしてください。
頭の中が止まる。
仕事はしてきた。
毎日ちゃんと出社して、言われたことをやって、ミスしないように気をつけてきた。
でも「これが得意です」と言えるものが思いつかない。
ずっと言われた通りにやってきただけかもしれない。
特別なスキルがあるわけでもない。
資格もない。
転職サイトのページを、そっと閉じる。
今の仕事を「普通にやっている」だけに見える
自分のやっていることを振り返っても、特別なことをしている感じがしない。
メールを送る。
資料を作る。
会議に出る。
電話を取る。
確認をする。
期限までに終わらせる。
どれも、職場では当たり前のことに見える。
これを「スキル」と言っていいのか分からない。
面接で話しても、相手が興味を持つとは思えない。
「普通の事務作業をしていました」
「言われた仕事をこなしていました」
それだけでは、何も伝わらない気がする。
でも、それ以上の言葉が見つからない。
やりたいことより、嫌なことの方が分かる
転職した人の話を聞くと、
「やりたいことがあって」という言葉が出てくることがある。
自分には、それがない。
次に何をしたいのか。
どんな仕事をしたいのか。
はっきり答えられない。
「逃げたいだけじゃないか」と思ってしまう。
そう考えているうちに、また時間が過ぎていく。
でも、やりたいことは分からなくても、嫌なことは分かる。
毎朝起きるのがしんどい。
職場の空気がつらい。
人の顔色を見ながら働くのに疲れた。
この仕事を、この先ずっと続けていく気がしない。
それだけは、分かっている。
やりたいことが明確な人だけが転職していいわけではない。
今いる場所が合わないと気づいた人も、動いていい。
頭ではそう思っている。
それでも、「それだけで動いていいのかな」という気持ちは残る。
「何もできない」は本当か。スキルという言葉が大きすぎる
少し立ち止まって考えると、本当に何もないのかというと、そうでもない気がする。
ミスを減らすために、自分なりに工夫してきた。
気難しい相手と、なんとかやり取りしてきた。
締め切りを守るために、段取りを考えてきた。
誰かが困っていたとき、何度か助けたこともある。
当たり前だと思っていたけれど、
当たり前にできる人ばかりではないのかもしれない。
ただ、それを「強みです」と呼ぶのは、まだ怖い。
「スキル」と言われると、何か特別なものを持っていなければいけない気がする。
資格。専門知識。営業成績。分かりやすい成果。
そういうものがないと、書いてはいけないような気がする。
でも実際には、仕事で身についたものは、もっと地味な形をしていることもある。
相手に合わせて説明すること。
間違いがないように確認すること。
続けること。投げ出さずにやってきたこと。
そういうものも、少しずつ身についた力なのかもしれない。
ただ、それが地味すぎて、自分では価値があると思えない。
だから「何もできない」と思ってしまう。
分からないまま、動いた人もいる
転職した人の中にも、
最初から自分のスキルを分かっていた人ばかりではない。
何ができるか分からないまま、とりあえず求人を見た人もいる。
職務経歴書を書きながら、自分のやってきたことを思い出した人もいる。
応募してみて、初めて自分が何を評価されるか知った人もいる。
動く前に全部分かっている人は、たぶんそんなに多くない。
それでも、最初の一歩が重いのは変わらない。
求人を見るだけなのに、自分の足りなさを見せつけられるような気がする。
そのしんどさは、本物だと思う。
それでも、また転職サイトを開く
転職したいけど、自分に何ができるか分からない。
そう思いながら、今日も転職サイトを開いて、また閉じた。
でも昨日より少しだけ長く見ていた気がする。
やりたいことはまだ分からない。
強みも、うまく言葉にできない。
それでも、何かが少しずつ動いている気がする。
そういうところから始まる人も、たぶんいる。